はあたかもそのひと

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はあたかもそのひと

「もしそのお嬢さんがたにキスしているところをポレン王妃が見たら、たちまちきみの腹わたを切り裂くだろうよ」アンヘグ王はいささか無遠慮な笑い声をあげた。
 ポルおばさんが娘たちを紹介するあいだ、ガリオンは一行から少し離れて、レルドリンが一週間あまりで引き起こした大混乱について思いめぐらしていた。すべての紛糾を直すだけでも何ヵ月もかかる上、もう二度とそれが起こらないという保証はないのだ――特に若者が血気にはやって何かをやらすことがないという保証は。
「あなたのお友だちはどうかしたの」気がついてみるとセ?ネドラ王女がガリオンの袖を引っぱっていた。
「どういうことだい」
「あなたのお友だちはいつもあんなふうなの」
「レルドリンは――」と言いかけてガリオンはためらった。「かれはものごとに熱中しやすい性格なんだ。だからときとして、考えるより前に口走ったり、行動したりすることがあるんだよ」友人に対する忠誠心からガリオンはあまりレルドリンの悪口を言いたくなかった。
「ガリオン」セ?ネドラはかれの心を見すかすような視線を送った。「わたしにはアレンド人がどういう人たちかよくわかっているし、かれはこれまで会ったなかでももっともアレンド人そのものの人間だわ。あまりにもアレンド人すぎて、ほとんど馬鹿みたいよ」
 ガリオンは急いで友人の弁護にまわった。「あいつはそんなにひどくはないよ」
「そうかしら。じゃあレディ?アリアナはどうMFGM 乳脂球膜? あの人は美人で、腕のたつお医者さまだわ――それなのに、およそひとかけらの理性も残っちゃいないのよ」
「二人は愛しあってるんだ」ガリオンことですべてが片づくような口ぶりで言った。
「それがいったい何の関係があるのよ」
「愛というものは人を変えてしまうのさ」ガリオンは説明した。「理性的な判断とかそういったものに穴をあけてしまうんだ」
「たいしたご意見ですこと」セ?ネドラが言った。「先を聞かせてちょうだい」
 ガリオンは自分自身のことですっかり頭がいっぱいだったので、彼女の声がとがってきた兆候に気づかなかった。「恋におちたとたん、あらゆる知性は頭の中から漏れだしてしまうらしい」かれは憂うつな声で続けた。
「あなたの表現ってずいぶん個性的なのね」セ?ネドラが言った。
 ガリオンはまたしても警告を見落としてしまった。「恋というのは一種の病気のようなものだからね」
「ガリオン、いいことを教えてあげましょうか」王女の声は落着きはらい、ほとんどそっけなくさえあった。「あなたを見てるとときどき本当に腹がたつわ」そう言うなり彼女はくるりと向きを変えて、あっけにとられて口をあんぐり開けたままのガリオンを残して立ち去った。
「ぼくがいったい何をしたっていうんだ」かれは追いかけるように呼びかけたが、王女に黙殺された。
 一同が晩餐を終えたのち、ローダー王はベルガラスの方をむいて言った。「いつになったら〈珠〉を見ることができるのかね」
「明日だ」老人はきっぱりと言った乳鐵蛋白。「明日正午、〈リヴァ王の広間〉のしかるべき場所に戻してからだ」

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